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飛んだ先は神代にあるはずの彼方の墓だった。
無事この時代に飛べたのだと思うと、私は安心した。
「彼方、久しぶりだね」
彼方が優しく微笑み返してくれたような気がした。
「……天華?」
彼方の墓でじっと夕日が沈むのを眺めていると、声をかけられた。
振り返ると、そこには矢彦がいた。手にはいくつかの綺麗な花を持って、見たこともないような着物を身に付けていた。
「矢彦、その花なぁに?」
矢彦は度肝を抜かれたように目を丸くして固くなっていた。久しぶりに会ったのにこの間抜けな質問に驚いたのだろう。
「……その墓に捧げるつもりでいた」
「あ、彼方への花?」
矢彦が彼方の墓参りをするということが可笑しくて声を上げて笑った。
決まり悪そうに矢彦は花を携えていて、もし今彼方が生きていたら仲が良くなっていたのかもしれない。そう思うとさらに笑いがこみ上げてくる。
笑うことも、本当に久しぶりだ。
「あれから、二月が経った」
「え、二ヶ月も?」
「戻ってきてくれたのか」
そして矢彦はやんわりと笑った。
それに応じて私もにっこりと笑う。
「戻ったよ。これからも居続けるから」
「ずっと?」
「ずっと」
ずっといるよ。ここに。
そして一緒に生きることを決めたから。
「好きだよ、矢彦」
初めて告げたこの想いを、あなたに。
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