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榊が来てから、神様は大変喜びました。
何故なら今まで話し相手がおらず、1人静かに見ていたのですから。
そして榊も神様と同じく、喜びました。
今までの災い全てを祓ったのは目に見えぬ神様であり、榊だけが目にかけることを許された人間なのですから。
人間たちも喜びました。
榊を通して神様の声を聞く事が出来るのですから。
人間たちは神様に願います。
明日は祭りのために晴れてください、と。
明後日は水の恵みのために雨を降らせてください、と。
人々の願う言葉を聞いて、榊は神様に直接願いました。
もちろん、神様はそれを拒みません。
神様の好きな人間たちがそれを願うのに、どうしてそれを拒む必要があるでしょうか。
榊は幸せでした。
人々に役立つ事がとても嬉しかったのです。
周りの人間たちが榊を頼るたびに、榊は幸せな気持ちでいっぱいでした。
そして、いやな顔ひとつもせず、願いを神様に伝える榊が人間たちは大好きでした。
榊が神様の願いを伝えることに、人々はいつしか『全神』と呼ぶようになったのです。
そして『全神』であった榊の願いを叶えてくださる神様を『迦楼羅』とも呼びました。
ある日、榊は気付きます。
私は神様の事が好きなのだ、と。
神様の傍にずっといたいのだ、と。
神様の傍に居ることができれば、他は何も要りません。
人間たちの信頼も、好意も、すべて要らないと感じたのです。
神様さえいれば、それでいいのだ、と。
それを知ってから榊はさらに幸せな気持ちになりました。
神様が幸せでいてくれるなら、そして傍に自分がいるのなら。
榊はこの幸せがずっと続くものだと思っていました。
そして、そんな幸せそうな榊を見つめる神様も、そう思っていました。
もう1人の『全神』によって、この幸せが破壊されることも知らずに……
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